学びなおしを学びなおす ~流行りのリスキリングを考える~
突然だが、「リスキリングとは?」と問われたら、あなたは何と答えるだろうか。
大半の人は「学びなおしでしょ」と、得意げに上から目線で鼻をフンフン言わせながら即答できるかもしれない。
では、
「学びなおしとは?」
と突っ込まれると、
「う、それは..」
と、おそらく答えに窮するのではないだろうか。
さらに、「リカレント教育との違いは?」まで聞かれると、たぶん土下座して「参りました」となるに違いない。
なぜか急に流行り始めたリスキリング、今回はこの得体のしれない代物をひも解いていこう。
■リスキリングとは?その定義
リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義される。
最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の波に押されて、「デジタル技術の進化によって生じる新たな業務に対応するためのスキル教育のこと」を指す場合も多い。そしてこれは、学びなおしとはイコールではないことを意味している。
学びなおしは、個人が関心の赴くままに様々なことを学ぶことだが、リスキリングは、この先も仕事で価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶ、という点が強調される。
要するに、働く上で自分の居場所を確保し続けるための学びのことをリスキリングと言うわけである。
ついでに、リカレント教育とは、「働く、学ぶ、働く」を繰り返す教育のことで、学ぶ間は基本的に学生の身分なので、その間は離職している状態。リスキリングとはまったく違うものである。
■流行りの背景
リスキリング流行りの背景には、世界的な第4次産業革命の躍進がある。
IoTやビッグデータ、AIなどデジタル技術を活用して業務やビジネスを変革するDXだが、世界も日本も、そのDXを推進する人材がいないという人的資源の課題に直面している。
そこで登場したのがリスキリングである。リスキリングによって、デジタル技術の力を使いながら価値を創造できるように、多くの従業員の能力やスキルが再開発されると考えたわけだ。
世界経済会議では2018年から3年連続で「リスキル革命」と称したセッションが行われ、その中では「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」と宣言された。
「第4次産業革命により、数年で8000万件の仕事が消失する一方で9700万件の新たな仕事が生まれる」
とまで言われている。
■あなたはどうリスキリングする?
「リスキリングしなければ!でも何をすればいいのだ?」
そう悩む人も多いはず。
もしあなたが求職中ならばその悩みは正しい。だって、リスキリングは、まず企業の中に「あなたがリスキリングすれば、こんな輝かしい将来を約束します」というキャリアマップがあってこそ成立するものだからだ。そんな求職中のあなたにはこんな情報を提供しよう。
これはリスキリングへの取り組みが積極的な企業の業種別・職種別のマップだ。
IT関連、情報通信などインフラに関わる業種、IT技術、企画系営業職のリスキリング率が高いことが分かる。
あなたがこの先目指す業種・職種とこのマップを照らし合わせて、一般的なリスキリングやデジタルリスキリングなど、自分の学ぶべきものを見つけるといいかもしれない。
面接のときに企業が必要としているスキルをすでに修得しているならば、それは採用に向けて大きなアドバンテージとなるに違いない。
■働き続ける社会人になるために
どうやらリスキリングは避けて通れないようだ。
せっかく就職しても、リスキリングしなければ、企業内で「価値を生み続ける」人材として生き残れない。
しかし、逆にいえば、上手にリスキリングすれば、社内で価値を発揮し続けることができる人材になれる。
就職前から、目指す企業が求めるリスキリングを修得して、サクッと内定を決めて、価値ある人材として働き続けよう。
あなたが生涯に渡って輝き続けることを、リスキリング兄さんは願っているぞ!
パーソル総合研究所 「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」
リクルートワークス研究所「リスキリングとは」~DX時代の人材戦略と世界の潮流~
厚生労働省認定キャリアコンサルタント。株式会社リクルートでキャリア開発に携わる。専門は人材採用・育成。人事担当者と求職者のカウンセリングは通算10,000回を超える。